第11回「坐骨神経痛」
皆様も「坐骨神経痛」という言葉を耳にしたことはありますよね?患者さんの中にも「病院で坐骨神経痛と診断された」という方がよくおられます。しかし、この「坐骨神経痛」というのは病名ではないということはご存知ですか?
まず「坐骨神経」とは、腰椎の間から出てる神経が一つの束となって足の方に向かって伸びてる神経を坐骨神経と言います。そして、その神経ライン沿いになんらかの原因によってシビレや痛みが生じる症状を総称して「坐骨神経痛」と呼ぶのです。ですから、一言で「坐骨神経痛」と言っても様々な原因があり、その原因によって治療方法は変わってくるのです。
その原因の中でも主なものをいくつかご紹介します。
*腰椎椎間板ヘルニア・・・坐骨神経痛の中でも圧倒的に一番多い原因です。ヘルニアに関しては前回の「頚椎ヘルニア」でお話ししました通りで、腰で起こるのが「腰椎ヘルニア」です。「頚椎ヘルニア」は腕から手にかけて症状が出ますが、「腰椎ヘルニア」はお尻から足にかけて症状が出ます。
*梨状筋(りじょうきん)症候群・・・次に多いのがこの「梨状筋症候群」です。腰椎の間から出て一つの束となった坐骨神経は上の図のようにお尻の深い所にある「梨状筋」という筋肉の隙間を通って足の方に向かうのですが、この梨状筋が硬く拘縮してしまうと坐骨神経を圧迫しシビレや痛みを生じさせます。長時間の立ち仕事をしている人(特に片足過重になってる人)、お尻の筋肉に負担がかかるスポーツ(ダッシュ系)をしている人に多く見られます。
*脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)・・・簡単に言えば背骨の変形によって、背骨の中を通ってる神経の束=脊髄(せきずい)を圧迫し神経痛が起こる症状です。上記の「腰椎ヘルニア」「梨状筋症候群」はほとんどが片足に症状が出ますが、この脊柱管狭窄症は両足に症状がでます。中高年の男性に多いです。
*その他・・・他にも坐骨神経痛を引き起こす原因はいくつかあるのですが、最近私の臨床の中で増えてきてるのが、坐骨神経が走行してる上に付いてる筋肉の膜(筋膜)の癒着によって神経痛を引き起こしてるケースが増えてきています。主に、大腿二頭筋であったり、前脛骨筋、長腓骨筋など。特に高いレベルでスポーツをしてる人によく診られ、その癒着を取り除くことによって一気に改善するという結果が出ています。
このように「坐骨神経痛」にも様々な原因がありますので、しっかりとした診断によって原因を明確にすることが改善には重要です。