第34回「知っておきたい『抗重力筋(こうじゅうりょくきん)』」
皆様は「抗重力筋(こうじゅうりょくきん)」という言葉を耳にされたことはありますか?
「重力」というのはご存知のとおり、地球上に存在する物体を地面に引き付ける力のことです。
「抗重力筋」というのは、簡単に言うと、
重力に反発してはたらく筋肉のことを言います。
この「抗重力筋」の存在が身体のバランスを維持するためにはとても重要な役割を担っておりますので、今回は「抗重力筋」についてお話ししていきたいと思います。
上腕二頭筋と上腕三頭筋
まず、この「抗重力筋」を説明するにおいて、一番わかりやすい「上腕二頭筋」と「上腕三頭筋」についてお話しします。
*上腕二頭筋
上腕二頭筋は肩から肘にかけて前面に付いていて、肘を曲げる際に強くはたらく「力こぶ」の筋肉です。
肘を曲げる動作というのは、肘から先の前腕(ぜんわん)を、下から上へ持ち上げる動作なので重力に逆らっているわけです。
ですから、日常生活において常に重力に逆らってはたらいているため、特別意識して鍛えていない人でも自然にある程度の筋力が備わっているのです。
*上腕三頭筋
一方、上腕三頭筋は上腕二頭筋の後面に付いていて、肘を伸ばす際にはたらく筋肉です。
肘を伸ばす動作というのは、前腕部を下に降ろす動作のため重力に伴っているので、それほど筋力を使う必要がありません。
そのため日常生活では強く使わないので、女性の方がよく気にされるように、二の腕の筋肉はたるみやすいのです。
上腕三頭筋を鍛えるには、重力に逆らう体勢を作った上で肘を伸展させる必要があります。
腹筋群と背筋群のバランスで良い姿勢を維持
人間がこの地球上で、座ったり立ったりという動作がとれるのは、、常にこの「抗重力筋」がはたらいているからなのです。
厳密にいうと、寝ている状態でも抗重力筋ははたらいています。
そして、この「抗重力筋」が低下してくると、座ったり立ったりという動作がしんどくなってきます。
その第一歩が姿勢の崩れです。
顕著な例でご説明すると、
腹筋群と背筋群のバランスの崩れです。
腹筋群というのは、上体を前に倒す際にはたらく筋肉ですので重力に伴ってはたらいており、日常生活においては強くはたらくケースは少ないです。
ですから、ほっとくとドンドンお腹の筋肉はたるんたるんになっていきます。
腹筋群をはたらかせるためには、重力に逆らう状態を作って上体を前に倒さないといけませんよね。
逆に背筋群は、上体を起こす際にはたらく筋肉ですので、座ってる状態でも立ってる状態でも常にはたらいているため、意識しなくても使っているので、自然に筋力は強くなります。
と言うことは、日常生活を自然に送っているだけでは、
・腹筋群⇒どんどん低下していく。
・背筋群⇒常に筋力キープ、もしくは筋力アップする。
その結果、
体幹の前後の筋肉のバランスが崩れ、重心が正しい位置で保てなくなるのです。
歳を重ねるにつれ、段々と身体が前のめりになっていく原因はここにあります。
*姿勢のポイントとなるその他の主な抗重力筋
(頚部)・胸鎖乳突筋・僧帽筋
(股関節)・腸腰筋(大腰筋+腸骨筋)・大殿筋
(下肢)・大腿四頭筋・下腿三頭筋(腓腹筋+ひらめ筋)
姿勢を意識するだけで筋力トレーニング
このように、人間は地球上で立つ・座るという動作をしているだけで、重力に逆らって筋肉を使っているのです。
そして、その重力に逆らうだけの筋力がなくなってくると、どんどんバランスが崩れ、姿勢が崩れ、挙句の果て「立てない」「起き上がれない」といった身体になってしまいます。
しかし逆に言うと、
「正しい姿勢で座る」「正しい姿勢で立つ」というだけで、既に抗重力筋に対しての筋力トレーニングとなっているのです。
まっすぐ座ったり、まっすぐ立ってるとしんどくないですか?疲れませんか?
それは、それだけ筋肉を使っているからです。
腹筋群も下手な筋トレをすると腰を痛める原因になりますが、正しい姿勢で意識してお腹に力を入れるだけでも十分筋トレになります。
重力に負けずいつまでも美しい姿勢を維持できるように、今のうちからしっかり姿勢を意識して「抗重力筋」を鍛えましょう!!