第39回「スポーツ障害の代表的症状『肉離れ』」
皆様も「肉離れ」という症状は耳にしたことはあるでしょう。
最近では『世界陸上』の100m×4リレーで、ジャマイカチームのアンカーを務めたウサイン・ボルト選手がバトンを受け取って走り出した途端、左大腿裏を肉離れして走れなくなったシーンを目にしたと思います。
また、プロ野球の世界でも、北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手が春先に同じく左大腿裏を肉離れし、今シーズンは苦しいシーズンを送っています。
サッカー日本代表の本田圭佑選手も、ふくらはぎの肉離れにより、移籍したメキシコリーグでプレーできない状態が続いているようです。
このように、基本的にスポーツをしている際に起こることの多い「肉離れ」についてお話ししていきたいと思います。
筋肉痛⇒肉離れ⇒筋断裂
前回の『知っておきたい白筋と赤筋』でもお話ししましたように、筋肉は筋線維が束になって形成されています。
肉離れは、この筋線維がプチッと切れてしまう症状であるというのは皆様もなんとなくお分かりだとは思いますが、肉離れにも程度があります。
〇第1段階(軽症レベル)
部分的に小さな損傷が入っている状態です。
自力で歩行や運動は出来る状態ですが、筋肉の収縮がスムーズでなくつっぱりを感じます。
いわゆる「筋肉痛」のような状態です。
〇第2段階(中症状レベル)
一部断裂を起こしている状態です。
断裂しているので内出血が見られます。
歩行時に痛みを感じます。
一般的に「肉離れ」と言われる状態です。
〇第3段階(重症レベル)
かなりの部分、もしくは完全に断裂している状態です。
断裂している部分に陥没が見られます。
激しい痛みで歩行は不可能です。
「筋断裂」と言われる状態です。
このような段階を意識せず
疲労が溜まっているのに無理をする(ケア・メンテナンスを怠る)
⇓
痛みを感じているのに無理をする(ケア・メンテナンスを怠る)
⇓
筋肉が切れる(長期療養を余儀なくされる)
ということになってしまいます。
なぜ切れる???
では、なぜ筋肉・筋線維は切れてしまうのか?
上述したように、一般的にはスポーツをしている最中に起こることが非常に多いです。
よく起こる部位としましては、
大腿後面のハムストリング(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)
大腿前面の大腿四頭筋(大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋)
あと、下腿三頭筋と言われるヒラメ筋、腓腹筋などが代表的箇所でありますし、下肢に限らず大胸筋、広背筋、腹斜筋などで起こるケースもよくあります。
なぜ、切れてしまうのかと言いますと、
筋肉の収縮が急激なスピード、負荷に耐え切れず切れてしまうのですが、
根本的な原因は、筋肉の柔軟性の欠如です。
その柔軟性の欠如の要因は人それぞれ違います。
・疲労の蓄積
・筋力不足
・運動不足
・ストレッチ不足
・体幹のバランス不良
・気温の変化
などが原因で日頃から筋肉にストレスを溜めてしまってるがうえに起こってしまうのです。
肉離れを防ぐためにも体幹の安定を
ウサイン・ボルト選手は、実は若い頃にもよく肉離れをしていました。
ボルト選手は生まれつき「脊柱側弯症」を患っているため体幹のバランスが悪く、走る時に骨盤が左右に大きく揺れるため下肢に過度な負担がかかっていたのです。
それを過酷なトレーニングで強靭な筋肉を身に付け、そしてカイロプラクターをトレーナーに付け常に体幹のバランスを調整しながら肉離れを克服し、あの人類最速の走りを手に入れたのです。
今回の肉離れは、会場の気温の低さも原因として言われていますが、やはり全盛期に比べて筋力が落ちてしまっていたのと、リレーで前の選手を「抜きたい!」という思いが強く出て、過度な力が足に加わったのだと思います。
大谷翔平選手のケースも、プロ入り以来続けてきた「二刀流」による疲労の蓄積に加え、昨シーズン痛めた右足首をかばってプレーし続けていたことによるバランスの崩れによることが大きいと思われます。
このように、体幹のバランスの安定がとっても重要なのです。
バランスが悪いと、どうしてもある一定の部分に過度な負荷がかかり、そこが悲鳴を上げてしまうということです。
わかりやすくいうと、
左右のバランスが均等にとれていれば、左右の足には50:50の割合で体重が掛かります。
しかし、これがもし左に体幹が傾き、左足重心になってしまっていると、左右の足にかかる体重の割合が70:30となってしまいます。
そうなると、左足は本来50を支えればいいところが70も支えなければいけなくなるわけですから、当然その分疲労がたまります。
日常でそんな疲労を蓄積させている状態で、スポーツなどで大きな負荷が加わると、その負荷に耐えられるわけがないということです。
肉離れ=固定は間違い
肉離れを起こしてしまった時、皆様は「テーピングなどでぐるぐるに固定する」というイメージがありませんか?
スポーツ中継などを見ていても、患部をぐるぐるに固定してプレーをしている選手を目にしたりします。
でも、実はこれは間違いなのです。
一見、固定することにより患部への負担が減り、痛みが緩和するように思われますが、これは「治りを遅くする」もしくは「痛みを悪化させる」原因となっているのです。
固定させることにより、
・痛みの治癒に大切な患部への血液の流れを妨げてしまいます。
・筋肉の柔軟性が奪われ更に切れやすくなります。
そして、この理由からいくと「安静」にし過ぎるのもよくはないのです。
ある程度痛みが引くまでは安静にしておく必要はありますが、状態を診て少しづつ動かしていきましょう。(タイミングは専門家の指示を仰ぐのがいいです)
もちろん、体重をかけての運動はできませんから、座っている状態、寝ている状態でゆっくり動かしてください。
動かすことにより、
・患部にしっかり血液が送られ治癒力が高まる。
・筋肉の柔軟性が高まり筋線維が修復しようとする。
ということで、治りも早くなるのです。
焦って無理をするのは禁物です。ゆっくりじっくりを心掛けてください。
これから少しづつ涼しくなっていき、身体を動かす機会も増えてくるかと思います。
突然動いて肉離れを起こしてしまわないように、今からしっかり準備をしておいてください。