第25回「肩関節のメカニズム①関節編」
人間の身体には200以上もの関節がありますが、その中でもあらゆる方向に一番大きく動くのが肩関節です。
そんな大きく動く肩関節ですが、「五十肩」と言われる症状に代表されるように、
・腕があがらない!
・腕を挙げようとすると痛い!
・じっとしてるだけでも肩が痛い!
など、動きに制限がかかる障害が発症するケースが多々あります。
それはなぜかと言いますと、大きく動く関節であるがゆえ、
動きのメカニズムがとっても複雑
なのです。
まず、関節のメカニズムからお話しすると、そもそも「肩関節」というのは総称であって、細かく説明すると肩には、
・肩甲上腕関節(肩甲骨と上腕骨で形成されている関節)
・肩甲胸郭関節(肩甲骨と胸郭[肋骨]で形成されている関節)
・胸鎖関節(胸骨と鎖骨で形成される関節)
・肩鎖関節(肩甲骨と鎖骨で形成される関節)
などの関節で構成され、それぞれが正常に可動することによって、肩関節として大きく動くのです。
(*正確には、その他にも関与している関節あり)
そして、この中でも特に重要なのが、
肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節のバランスです。
腕を横から挙げていく場合、腕だけが動いて肩甲骨が動かなければ、腕は真上まで挙がりません。
3D render of a blue medical image of close up of shoulder bone
この肩甲上腕関節の動き(腕の動き)に伴い、肩甲胸郭関節(肩甲骨)も動かないといけないのです。
3D render of a blue medical image of close up of shoulder bone
この2つの動きの比率は、
肩甲上腕関節:肩甲胸郭関節=2:1
が正常です。
簡単に言うと、肩甲上腕関節が120度動いて、肩甲胸郭関節が60度動くことによって、腕が180度真上まで挙がるということです。
ということは、肩甲胸郭関節が全く動かなければ腕は120度しか挙がりません。
肩甲上腕関節が全く動かなければ腕は60度しか挙がりません。
そして、このメカニズムに異常がでることにより
五十肩の原因となるケースが非常に多いのです。
50歳になってないのに五十肩???
よく「私まだ30代なのに五十肩なんですか?」とか、「四十肩と五十肩ってどう違うんですか?」というようなことを聞かれます。
まず「五十肩」というのは病名ではありません。
正式には「肩関節周囲炎」と言います。
そして、その肩関節周囲炎にしても、上記に説明した肩関節における様々な関節のどこで炎症が起きているのかによって、更に細かい病名がつきます。
要は「腕が挙がらない」症状を総称して「肩関節周囲炎」と言い、昔は40代や50代になるとそういう症状が現れる人が多かったので、「四十肩」「五十肩」と呼んでいたのです。
しかし近年では、パソコンやスマホの普及により、30代どころか20代でこの「肩関節周囲炎」になる人が急増しています。
姿勢不良から猫背になると、肩が前方に丸まる「ラウンドショルダー」となり、肩甲上腕関節の動きが制限されてしまいますし、肩甲骨は外方向にズレ、肩甲骨周辺の筋肉が過緊張を起こし、肩甲骨の動きを制限してしまいます。
さらに、腕を動かす機会が極端に減少してるがためによる筋力低下も原因としてあげられます。(筋肉に関しては次回説明)
「五十肩はほっとくといずれ治る」は大間違い!
当院に肩関節周囲炎で来院される患者様からよく耳にするのが「病院に行ったら、1年ぐらいほっといたらそのうちまた挙がるようになるよと言われた」というセリフ・・・、
これは大きな間違いです!
確かにまた挙がるようになるかもしれません。
しかしそれは「治った」のではなく、身体が異常に慣れ、そして「痛くない動かし方」を覚えてくるのです。
要は、「正しくない動かし方を身につけてしまう」だけのことなのです。
なので、しばらくするとまた挙がらなくなる、別の箇所が痛くなる、この繰り返しです。
肩関節周囲炎を完全に治すには、
・肩甲上腕関節を正しい位置に戻す。正常な可動域を取り戻す。
・肩甲胸郭関節を正しい位置に戻す。正常な可動域を取り戻す。
・猫背解消のために頚椎、胸椎、腰椎のズレを正す。
・身体全体のバランスを正常化する。
・日常での姿勢を改善する。
・正常な筋力を取り戻すためのトレーニング
などが、必須となります。
次回は「肩関節のメカニズム②」で、肩関節の動きに関する筋肉についてお話しします。