第27回「肩関節における筋力トレーニングの仕方」
前回お話しした肩関節の動きに作用する主な筋肉に対しての、正しい筋力トレーニングの仕方についてお話ししていきたいと思います。
まず筋力トレーニングを行なう際に最も大切なことは、
・どの筋肉に対してトレーニングを行なうのか?
・その筋肉はどういったはたらきをするのか?
・どの方向に、どのくらい動くのか?
・今の筋肉の状態はどうなのか?
などをしっかり理解したうえで行なうか、もしくは、理解されてる専門家に指導を受けながら行なうかで、結果は大きく違ってきます。
そこで当院で患者様に筋力トレーニングを行なう際に使用して頂くのが、
この「セラバンド」というトレーニングチューブです。
強度によって色分けされており、鍛えたい筋肉の強さによって使い分けれます。
そして何より良い点は、鍛えたい筋肉がはたらく瞬間にだけ負荷を加えることが出来るため、
余計な筋肉に負担がかからないという点です。
どういったことかと言いますと、
このようなダンベルや鉄アレイでトレーニングする際は、持った時点からすでに筋肉に負荷がかかってしまいます。
そして、動かしてる際も常に重みを感じているので、鍛えなくてもいい筋肉にまで負荷がかかってしまうのです。
その点セラバンドでのトレーニングだと、最初はバンドにテンションがかからないようにポジションをとっておいてから動きに入り、目的の筋肉がはたらく時にピンポイントに負荷がかかるようにトレーニングをすることができるのです。
このことをご理解頂いたうえで、このあとのトレーニング方法を見ていってください。
◊◊◊インナーマッスル◊◊◊
«棘上筋»
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外転(腕を横から挙げる動作)初期にはたらく筋肉なので、挙げすぎないように(30度ぐらいまで)注意。
30度を越えると棘上筋のはたらきは終わり意味がありません。
«小円筋»
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外旋(腕を外に捻る)筋ですので、肘を脇腹につけたままの状態で、肩を外方向に捻っていきます。
これも30度ぐらいまでです。
«大円筋»
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小円筋と反対の内旋(内に捻る)にはたらく筋肉です。
バンドをどなたかに持ってもらうか、どこかに括り付けて行なってください。
«棘下筋»
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肩関節外転90度の位置で外旋方向にはたらく筋肉です。
外転90度の位置で腕を台に置いたり、サポートをしてもらって行なうとやりやすいです。
«肩甲下筋»
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棘下筋と反対に、外転90度の位置で内旋方向にはたらく筋肉です。
同じく外転90度の位置で固定して行なうとやりやすいです。
◊◊◊アウターマッスル◊◊◊
«三角筋»
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外転30度過ぎから強くはたらく筋肉です。
30度までに強い負荷をかけてしまうと棘上筋を痛めてしまうので注意。
«広背筋»
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伸展(腕を後ろに引く)の際に強くはたらく筋肉です。
脇を締めてまっすぐ後ろに引いてください。
«大胸筋»
①
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②
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大胸筋はいろいろな方向への動きに強くはたらく筋肉ですが、その中でも内転(腕を内方向に動かす)に特にはたらきますので、この2パターンが一番効果があると思われます。
正しい筋力トレーニングで肩関節周囲炎の改善・予防
肩関節はとても大きな可動域を持つ関節ですが、その分筋肉への負担がとても大きな関節でもあります。
肩を大きく力強く動かすようなスポーツやお仕事をしている方は、アウターマッスルとインナーマッスルのバランスを崩してしまってることがありますし、逆に日頃肩をあまり動かすことのない生活をされてる方は、アウターマッスル・インナーマッスル問わず肩の筋肉そのものが低下しまってることもあります。
どちらのケースも「肩が挙がらない」「肩を動かしづらい」「肩を動かすと痛い」といった「肩関節周囲炎」を招く原因となってしまいます。
ご自身の肩の状態を理解したうえで、正しい筋力トレーニングを行ない、スムーズに大きく動く肩関節を維持していきましょう。