第29回「胸郭出口症候群」
今回は、近年「手のしびれ・痛み」の原因として、頚椎ヘルニアと共に非常に急増している「胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)」についてお話しします。
前回お話しした「手根管症候群」は、手首の部分での神経圧迫のため、手首から指先にかけてのみ症状が出るのですが、この「胸郭出口症候群」は、
肩から指先まで腕全体にしびれや痛みが出ることがあります。
まず、胸郭とは何かといいますと
胸骨(胸の真ん中にある骨)と肋骨(左右12本づつ)と胸椎(背骨)の集合体を言います。
そして胸郭出口というのは、肋骨の一番上のあたりのことを言います。
この胸郭出口の部分を、腕神経叢(腕に向かう神経の束)や、鎖骨下動脈・腋窩動脈といった血管が通っているのです。
*黄色のバンドが神経・血管
そして、この神経や血管が何らかの障害によって圧迫され、腕〜手にかけてしびれや痛みが生じるのが「胸郭出口症候群」です。
主に圧迫が生じる箇所が3か所あります。
①前・中斜角筋(首の横から一番上の肋骨に付いている筋肉)
前斜角筋と中斜角筋の間を、神経や血管が通っています。
前・中斜角筋は首を横に倒す動作ではたらく筋肉なのですが、この筋肉が拘縮することにより神経や血管を圧迫してしまいます。
肘をついて頬づえをつくような癖がある人はなりやすいです。
◎首を動かした際に、しびれ・痛みが強まることが多い。
②鎖骨と第1肋骨の隙間
鎖骨と一番上の肋骨の隙間を神経や血管が通っており、その隙間が狭くなることにより圧迫が生じます。
姿勢不良や肩周辺の筋肉の過緊張により鎖骨の位置・第1肋骨の位置がズレて起こります。
◎肩をすくむような動作をした際に、しびれ・痛みが強まることが多い。
③小胸筋(胸の奥の方に付いている小さな筋肉)
鎖骨の下から抜けてきた神経・血管は、この小胸筋の下を通って腕に向うため、小胸筋が拘縮すると圧迫が生じます。
肩を丸めて細かい作業をしたり、筋トレやお仕事で重たいものをガンガン持ったりして胸の筋肉が発達してる人がなりやすいです。
◎腕を横から挙げていく際に、しびれ・痛みが強まることが多い。
病院では「異常なし」???
当院に来院される患者様のケースを見てみると、「手のしびれ・痛み」で病院に行ってレントゲンやCTなどを撮って検査をした結果、「特に異常はないと言われた」・・・、という方の検査をしてみると、この「胸郭出口症候群」だったということが非常に多いです。
どうしても病院の先生も含め多くの方は、
手のしびれ・痛み=首のヘルニア、脳の異常
というイメージを強く持たれているようですが、最初にも言いましたように近年この「胸郭出口症候群」は急増しております。
「胸郭出口症候群」は、腕から手の指先にかけてのしびれや痛みの他にも、
・握力が入りにくい
・手が冷える
・血の気が引いたようにザワザワする
・手が青白い
・腕がだるい
などといった症状も出ますので、少しでも思い当たることがございましたら、早めにご相談ください。