Archive for the ‘からだのお話し’ Category

第30回「今注目されている肩甲骨について」

2017-06-14

昨今とても話題になっている「肩甲骨はがし」というのを、皆様もお耳にしたことはございますでしょうか?

 

「肩甲骨はがし」とは、肩甲骨の動きをよくして周りの筋肉をほぐすことです。

 

言葉に物凄くインパクトがあり急速に話題となっていますが、当院の施術では開院当初からこの「肩甲骨」の動きは重要視し、あらゆる症状に対してアプローチをしております。

 

今回はその「肩甲骨」についてお話ししていきたいと思います。

肩甲骨の位置

胸椎と肋骨と胸骨からなる「胸郭」の背面接してます。

大体胸椎2番から7〜8番の高さに位置しているのが正常です。

 

肩甲骨の可動方向

基本的には6方向へ動きます。

・挙上・・・真上への動き。

・降下・・・挙上と反対で真下への動き。

・外転・・・脊柱ラインから外方へ離れていく動き。

・内転・・・外転とは反対に脊柱ラインに近づく動き。

・上方回旋・・・肩甲骨下角(下の部分)が上外方へ上がっていく動き。

・下方回旋・・・上方回旋とは逆に上内方へ上がる動き。

 

第25回「肩関節のメカニズム①関節編」でお話ししたとおり、この肩甲骨の動きが肩関節の動きに大きく関与していますので、この各方向への動きをしっかりつけることにより、肩関節が大きく動くようになります。

 

肩甲骨に付着する筋肉

肩甲骨には、大きな筋肉から小さな筋肉まで非常にたくさんの筋肉が付着しております。

主な筋肉を上げていくと、

●肩甲骨上の方●

・肩甲挙筋・棘上筋・棘下筋・三角筋・僧帽筋

●肩甲骨外の方●

・小円筋・大円筋

●肩甲骨内の方●

・大菱形筋・小菱形筋・前鋸筋

●肩甲骨下の方●

・広背筋

など、これらが全てではありませんが、これだけの筋肉が肩甲骨に付着し、そして肩甲骨の動きに関与しているのです。

 

ということは、

肩甲骨の動きが悪くなる ⇒ これらの筋肉のはたらきも悪くなる ⇒ 肩が凝る

逆に、

これらの筋肉のはたらきが悪い ⇒ 肩甲骨の動きも悪くなる ⇒ 五十肩になる

ということになるのです。

 

肩甲骨の内側がすごく凝って痛い・・・

よく肩甲骨の内側の凝り・痛みを訴える方がおられます。

この辺りに発生する症状には「頚椎ヘルニア」など神経性の原因が考えられるケースもあるのですが、姿勢不良からくる筋肉の拘縮による凝り・痛みというケースも非常に多いです。

背中が丸まると肩の位置が前へズレます。

   ⇓

それに伴い肩甲骨が外方へズレます。

   ⇓

そして菱形筋(上図参照)が引っ張られ緊張します。

   ⇓

菱形筋の付着部である肩甲骨内側にストレスが加わり凝り・痛みになります。

 

運転手やデスクワークをされている方に非常によく見られます。

こういったケースの場合は、ただ菱形筋にアプローチをして緊張をとるだけではなく、肩甲骨を正しい位置に戻す必要があるのです。

 

肩甲骨を大きく動かして競技力アップ

プロ野球選手の大谷翔平選手やゴルフの石川遼選手、また水泳の瀬戸大也選手などが、肩甲骨が普通の人たちよりも異常に動くのをテレビなどで見かけたことがないでしょうか?

あそこまでは動かなくても、やはり肩甲骨の可動域が大きければ大きいほど肩関節周辺の筋肉もよくはたらき、力も発揮されやすくなることは間違いありません。

ということから、当院ではスポーツをされてる方の競技力アップのためにも、肩甲骨に対するアプローチは欠かしません。

 

このように、肩甲骨はあらゆることにおいてとっても大きな役割を担っておりますので、皆様も一度ご自身の肩甲骨の状態をチェックされてみてはいかがでしょうか?

 

肩甲骨セルフトレーニング法

 

 

 

 

 

 

 

第29回「胸郭出口症候群」

2017-06-07

今回は、近年「手のしびれ・痛み」の原因として、頚椎ヘルニアと共に非常に急増している「胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)」についてお話しします。

 

前回お話しした「手根管症候群」は、手首の部分での神経圧迫のため、手首から指先にかけてのみ症状が出るのですが、この「胸郭出口症候群」は、

肩から指先まで腕全体にしびれや痛みが出ることがあります。

まず、胸郭とは何かといいますと

胸骨(胸の真ん中にある骨)と肋骨(左右12本づつ)と胸椎(背骨)の集合体を言います。

そして胸郭出口というのは、肋骨の一番上のあたりのことを言います。

この胸郭出口の部分を、腕神経叢腕に向かう神経の束)や、鎖骨下動脈・腋窩動脈といった血管が通っているのです。

*黄色のバンドが神経・血管

そして、この神経や血管が何らかの障害によって圧迫され、腕〜手にかけてしびれや痛みが生じるのが「胸郭出口症候群」です。

 

主に圧迫が生じる箇所が3か所あります。

①前・中斜角筋(首の横から一番上の肋骨に付いている筋肉)

前斜角筋と中斜角筋の間を、神経や血管が通っています。

前・中斜角筋は首を横に倒す動作ではたらく筋肉なのですが、この筋肉が拘縮することにより神経や血管を圧迫してしまいます。

肘をついて頬づえをつくような癖がある人はなりやすいです。

◎首を動かした際に、しびれ・痛みが強まることが多い。

 

②鎖骨と第1肋骨の隙間

鎖骨と一番上の肋骨の隙間を神経や血管が通っており、その隙間が狭くなることにより圧迫が生じます。

姿勢不良や肩周辺の筋肉の過緊張により鎖骨の位置・第1肋骨の位置がズレて起こります。

◎肩をすくむような動作をした際に、しびれ・痛みが強まることが多い。

 

③小胸筋(胸の奥の方に付いている小さな筋肉)

鎖骨の下から抜けてきた神経・血管は、この小胸筋の下を通って腕に向うため、小胸筋が拘縮すると圧迫が生じます。

肩を丸めて細かい作業をしたり、筋トレやお仕事で重たいものをガンガン持ったりして胸の筋肉が発達してる人がなりやすいです。

◎腕を横から挙げていく際に、しびれ・痛みが強まることが多い。

 

病院では「異常なし」???

当院に来院される患者様のケースを見てみると、「手のしびれ・痛み」で病院に行ってレントゲンやCTなどを撮って検査をした結果、「特に異常はないと言われた」・・・、という方の検査をしてみると、この「胸郭出口症候群」だったということが非常に多いです。

どうしても病院の先生も含め多くの方は、

のしびれ・痛み=首のヘルニア、脳の異常

というイメージを強く持たれているようですが、最初にも言いましたように近年この「胸郭出口症候群」は急増しております。

 

「胸郭出口症候群」は、腕から手の指先にかけてのしびれや痛みの他にも、

・握力が入りにくい

・手が冷える

・血の気が引いたようにザワザワする

・手が青白い

・腕がだるい

などといった症状も出ますので、少しでも思い当たることがございましたら、早めにご相談ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第28回「手のしびれ・痛み」

2017-06-05

今回は、「手がしびれる」「手が痛い」「手に力が入りくい」などの症状についてお話ししていきたいと思います。

まず、「手がしびれる」といってもいろいろなケースがあります。

・腕から手にかけて全体的にしびれる

・肘から先がしびれる

・手のひら全体がしびれる

・指先のみがしびれる

・親指側、もしくは小指側のみがしびれる

など、しびれがくる範囲も様々です。

 

しびれの感覚においても

・ジリジリと正座で足がしびれるようなしびれ

・ジンジンと痛みに近いしびれ

・ザワーと血の気が引くようなしびれ

など、様々な感覚があります。

 

なぜこのようにいろいろな症状があるのかと言いますと、それは

しびれの原因も様々あるからです。

 

まず代表的な原因を上げると、

🔴頚椎ヘルニア🔴

頚椎ヘルニアに関しましては、第10回「頚椎ヘルニア」でお話ししております。

近年非常に増えておりまして、ひどくなるとしびれというより「腕を切って落としてほしい!」と訴えるほどのジンジンとした痛みになるケースもあります。

 

🔴胸郭出口症候群🔴

手に向かう神経が、首から肩の通り道において圧迫されてしびれが起こる症状で、こちらも非常に多い症状ですので、次回詳しくお話ししたいと思います。⇒第29回「胸郭出口症候群」

 

🔴手根管症候群🔴

手首の部分で神経が圧迫され、指先にかけてしびれが生じる症状です。

まず手根というのは、手首の部分に小さい骨の集合体がある箇所です。

そして、この手根部を断面で見ると、

このように溝のようになってます。

そして、この溝に蓋をするように屈筋支帯という靭帯が通っています。

これにより、手根管というトンネルができ、その中を正中神経(手首・手のひら・指などを動かす神経)が通っているのです。

「骨のしくみ・はたらき辞典」西東社

この手根管を通る正中神経が圧迫され手にしびれや痛みが生じるのが手根管症候群です。

 

なぜ正中神経の圧迫が生じるかと言いますと、私の臨床上多いケースは、

・女性が妊娠中、もしくは生理中(前後も含め)にホルモンの関係により手首の関節が緩くなり、そういう時に手根骨のズレが生じ圧迫される。

・パソコン仕事など手首を屈曲(手のひら側に倒す)した状態で長時間過ごしたり、逆に手首を動かす動作が多いお仕事をされていることにより、屈筋群が過緊張を起こし圧迫される。

・スポーツなどにおいて転倒や衝突の際に手首をついて手根骨がズレて圧迫される。

などといった、手根管が狭くなる要因ができることによって圧迫されるのです。

 

病院ではこの手根管症候群の症状を改善するために、鎮痛剤を処方したり、ブロック注射をしたりするらしいですが(それでも改善しないと手術・・・)、手根管の状態を正しい状態にしないと仮に痛みが軽減してもそれは一時的に過ぎません。

 

・手根骨を正しい位置に戻し、そしてその位置をキープするために筋肉バランスを正す。

・筋肉バランスが崩れないように小まめにセルフストレッチをする。(特に手首をよく動かす人)

 

こうすることにより、正中神経の圧迫を防ぐことができます。

 

 

 

 

第27回「肩関節における筋力トレーニングの仕方」

2017-05-31

前回お話しした肩関節の動きに作用する主な筋肉に対しての、正しい筋力トレーニングの仕方についてお話ししていきたいと思います。

 

まず筋力トレーニングを行なう際に最も大切なことは、

・どの筋肉に対してトレーニングを行なうのか?

・その筋肉はどういったはたらきをするのか?

・どの方向に、どのくらい動くのか?

・今の筋肉の状態はどうなのか?

などをしっかり理解したうえで行なうか、もしくは、理解されてる専門家に指導を受けながら行なうかで、結果は大きく違ってきます。

 

そこで当院で患者様に筋力トレーニングを行なう際に使用して頂くのが、

この「セラバンド」というトレーニングチューブです。

強度によって色分けされており、鍛えたい筋肉の強さによって使い分けれます。

そして何より良い点は、鍛えたい筋肉がはたらく瞬間にだけ負荷を加えることが出来るため、

余計な筋肉に負担がかからないという点です

どういったことかと言いますと、

このようなダンベルや鉄アレイでトレーニングする際は、持った時点からすでに筋肉に負荷がかかってしまいます。

そして、動かしてる際も常に重みを感じているので、鍛えなくてもいい筋肉にまで負荷がかかってしまうのです。

その点セラバンドでのトレーニングだと、最初はバンドにテンションがかからないようにポジションをとっておいてから動きに入り、目的の筋肉がはたらく時にピンポイントに負荷がかかるようにトレーニングをすることができるのです。

 

このことをご理解頂いたうえで、このあとのトレーニング方法を見ていってください。

 

◊◊◊インナーマッスル◊◊◊

 

«棘上筋»

 ⇒ 

外転(腕を横から挙げる動作)初期にはたらく筋肉なので、挙げすぎないように(30度ぐらいまで)注意。

30度を越えると棘上筋のはたらきは終わり意味がありません。

«小円筋»

 ⇒ 

外旋(腕を外に捻る)筋ですので、肘を脇腹につけたままの状態で、肩を外方向に捻っていきます。

これも30度ぐらいまでです。

«大円筋»

 ⇒ 

小円筋と反対の内旋(内に捻る)にはたらく筋肉です。

バンドをどなたかに持ってもらうか、どこかに括り付けて行なってください。

«棘下筋»

 ⇒ 

肩関節外転90度の位置で外旋方向にはたらく筋肉です。

外転90度の位置で腕を台に置いたり、サポートをしてもらって行なうとやりやすいです。

«肩甲下筋»

 ⇒ 

棘下筋と反対に、外転90度の位置で内旋方向にはたらく筋肉です。

同じく外転90度の位置で固定して行なうとやりやすいです。

 

◊◊◊アウターマッスル◊◊◊

 

«三角筋»

 ⇒ 

外転30度過ぎから強くはたらく筋肉です。

30度までに強い負荷をかけてしまうと棘上筋を痛めてしまうので注意。

«広背筋»

 ⇒ 

伸展(腕を後ろに引く)の際に強くはたらく筋肉です。

脇を締めてまっすぐ後ろに引いてください。

«大胸筋»

 ⇒ 

 ⇒ 

大胸筋はいろいろな方向への動きに強くはたらく筋肉ですが、その中でも内転(腕を内方向に動かす)に特にはたらきますので、この2パターンが一番効果があると思われます。

 

正しい筋力トレーニングで肩関節周囲炎の改善・予防

 

肩関節はとても大きな可動域を持つ関節ですが、その分筋肉への負担がとても大きな関節でもあります。

肩を大きく力強く動かすようなスポーツやお仕事をしている方は、アウターマッスルとインナーマッスルのバランスを崩してしまってることがありますし、逆に日頃肩をあまり動かすことのない生活をされてる方は、アウターマッスル・インナーマッスル問わず肩の筋肉そのものが低下しまってることもあります。

どちらのケースも「肩が挙がらない」「肩を動かしづらい」「肩を動かすと痛い」といった「肩関節周囲炎」を招く原因となってしまいます。

 

ご自身の肩の状態を理解したうえで、正しい筋力トレーニングを行ない、スムーズに大きく動く肩関節を維持していきましょう。

 

 

 

第26回「肩関節のメカニズム②筋肉編」

2017-05-28

前回の「肩関節のメカニズム①関節編」でお話しした正常な関節の動きを果たすためには、筋肉が正しいはたらきをする必要があります。

が、あらゆる方向に大きく動く肩関節は、この筋肉のメカニズムが非常に複雑なのです。

 

まず肩関節を動かす筋肉としては、主にはたらく大きな筋肉として、

三角筋・・・腕を真横から挙げる時に大きくはたらきます。

大胸筋・・・腕を前に動かす時、もしくは内方向に動かす時に大きくはたらきます。

広背筋・・・腕を後ろに動かす時に大きくはたらきます。

などがあり(他にもいくつかあり)、これらは関節を大きく動かし力強くはたらく筋肉で、

アウターマッスルと言います。

3D render of a male figure doing dumbbell standing lateral raise with muscles used highlighted

しかし、このアウターマッスルのみがはたらいても、肩関節は正常に動きません。

 

 

ローテーターカフ(回旋腱板筋群)
肩関節には、上記のアウターマッスルの下に、肩甲骨と上腕骨に付着する小さな筋肉群=回旋腱板筋群が存在します。
棘上筋・・・腕を真横から挙げる時の初期にはたらきます。
棘下筋・・・腕を外方向に捻る時にはたらきます。
小円筋・・・腕を外方向に捻る時にはたらきます。
肩甲下筋・・・腕を内方向に捻る時にはたらきます。*図にはありません。

これら回旋腱板筋群はインナーマッスルであり、アウターマッスルとは対照的に、細かい動きをすることによりアウターマッスルのはたらきを補助する役目があります。

 

インピンジメントシンドローム(はさみこみ症候群)
肩関節の動きには、
アウターマッスルとインナーマッスルの関係性がとっても重要
になってきます。
筋肉のはたらきと関節の動きを詳しく説明すると、
まず棘上筋のはたらきによって動きが始まります。(約30度付近から三角筋がはたらき出す)
しかし、ただ三角筋のはたらきのみで腕を挙げていくと、
このように肩甲骨と上腕骨が当たってしまいます。
そして、この部分で棘上筋が挟まれてしまうのですが、これがインピンジメントシンドローム(はさみこみ症候群)という障害なのです。
この挟み込みを防ぐために、棘下筋小円筋がはたらき、上腕骨が少し回旋(捻り)を入れながら上腕骨頭(上腕の先端)を下方に引き下ろします。
そうすることにより、肩甲骨と上腕骨の間に可動できるスペースができ、スムーズに腕を挙げることができるのです。

 

 

アウターマッスルとインナーマッスルのバランス

 

肩関節は非常に大きな可動域を持つ関節ですが、アウターマッスルが弱いと大き動くことはできません。

しかし、上記の説明のとおり、アウターマッスルばかりが強くはたらきインナーマッスルが弱いと、障害を起こす危険性が高まります。

得てして、表面から見てわかる筋肉を熱心に鍛えようとされる方は、どうしてもアウターマッスルに意識がいき、インナーマッスルをおろそかにしてアウターマッスルのみをトレーニングして肩を故障するケースが多いです。

 

また、野球やテニス、バレー、バドミントン、水泳など、肩を激しく動かすようなスポーツをされる方も、このインナーマッスルをしっかり鍛えておかないと、故障するケースが多いです。

近年は、スポーツジムも増え、ジムに通って「筋トレ」にはげまれてる方も多いですが、筋トレも正しい筋肉の知識を持って正しいやり方でやらないと、かえって身体を壊す結果となります。

専門家にしっかりアドバイスを受けたうえで行なうことをお薦めします。

 

また改めて、この肩関節の筋力トレーニングについてはお話ししていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

第25回「肩関節のメカニズム①関節編」

2017-05-26

人間の身体には200以上もの関節がありますが、その中でもあらゆる方向に一番大きく動くのが肩関節です。

そんな大きく動く肩関節ですが、「五十肩」と言われる症状に代表されるように、

・腕があがらない!

・腕を挙げようとすると痛い!

・じっとしてるだけでも肩が痛い!

など、動きに制限がかかる障害が発症するケースが多々あります。

それはなぜかと言いますと、大きく動く関節であるがゆえ、

動きのメカニズムがとっても複雑

なのです。

3D render of a skeleton with shoulder highlighted showing pain

まず、関節のメカニズムからお話しすると、そもそも「肩関節」というのは総称であって、細かく説明すると肩には、

肩甲上腕関節(肩甲骨と上腕骨で形成されている関節)

肩甲胸郭関節(肩甲骨と胸郭[肋骨]で形成されている関節)

胸鎖関節(胸骨と鎖骨で形成される関節)

肩鎖関節(肩甲骨と鎖骨で形成される関節)

などの関節で構成され、それぞれが正常に可動することによって、肩関節として大きく動くのです。

(*正確には、その他にも関与している関節あり)

 

そして、この中でも特に重要なのが、

肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節のバランスです。

腕を横から挙げていく場合、腕だけが動いて肩甲骨が動かなければ、腕は真上まで挙がりません。

3D render of a blue medical image of close up of shoulder bone

この肩甲上腕関節の動き(腕の動き)に伴い、肩甲胸郭関節(肩甲骨)も動かないといけないのです。

3D render of a blue medical image of close up of shoulder bone

この2つの動きの比率は、

肩甲上腕関節:肩甲胸郭関節=2:1

が正常です。

簡単に言うと、肩甲上腕関節が120度動いて、肩甲胸郭関節が60度動くことによって、腕が180度真上まで挙がるということです。

ということは、肩甲胸郭関節が全く動かなければ腕は120度しか挙がりません。

肩甲上腕関節が全く動かなければ腕は60度しか挙がりません。

そして、このメカニズムに異常がでることにより

五十肩の原因となるケースが非常に多いのです

 

 

50歳になってないのに五十肩???

 

よく「私まだ30代なのに五十肩なんですか?」とか、「四十肩と五十肩ってどう違うんですか?」というようなことを聞かれます。

まず「五十肩」というのは病名ではありません。

正式には「肩関節周囲炎」と言います。

そして、その肩関節周囲炎にしても、上記に説明した肩関節における様々な関節のどこで炎症が起きているのかによって、更に細かい病名がつきます。

要は「腕が挙がらない」症状を総称して「肩関節周囲炎」と言い、昔は40代や50代になるとそういう症状が現れる人が多かったので、「四十肩」「五十肩」と呼んでいたのです。

 

しかし近年では、パソコンやスマホの普及により、30代どころか20代でこの「肩関節周囲炎」になる人が急増しています。

姿勢不良から猫背になると、肩が前方に丸まる「ラウンドショルダー」となり、肩甲上腕関節の動きが制限されてしまいますし、肩甲骨は外方向にズレ、肩甲骨周辺の筋肉が過緊張を起こし、肩甲骨の動きを制限してしまいます。

さらに、腕を動かす機会が極端に減少してるがためによる筋力低下も原因としてあげられます。(筋肉に関しては次回説明)

 

「五十肩はほっとくといずれ治る」は大間違い!

 

当院に肩関節周囲炎で来院される患者様からよく耳にするのが「病院に行ったら、1年ぐらいほっといたらそのうちまた挙がるようになるよと言われた」というセリフ・・・、

 

これは大きな間違いです!

 

確かにまた挙がるようになるかもしれません。

しかしそれは「治った」のではなく、身体が異常に慣れ、そして「痛くない動かし方」を覚えてくるのです。

要は、「正しくない動かし方を身につけてしまう」だけのことなのです。

なので、しばらくするとまた挙がらなくなる、別の箇所が痛くなる、この繰り返しです。

 

肩関節周囲炎を完全に治すには、

 

・肩甲上腕関節を正しい位置に戻す。正常な可動域を取り戻す。

・肩甲胸郭関節を正しい位置に戻す。正常な可動域を取り戻す。

・猫背解消のために頚椎、胸椎、腰椎のズレを正す。

・身体全体のバランスを正常化する。

・日常での姿勢を改善する。

・正常な筋力を取り戻すためのトレーニング

 

などが、必須となります。

 

次回は「肩関節のメカニズム②」で、肩関節の動きに関する筋肉についてお話しします。

 

 

 

 

 

 

 

 

第24回「『走る』と『姿勢』の関係性」

2017-05-23

先日ネット上で面白い記事を見つけました。

「なぜお父さんは運動会で転ぶのか?陸上トップ選手が分析、原因は仕事中の姿勢?」

内容は、皆様もよく見かけたことがあると思いますが、運動会でお父さん競技や親子競技にはりきって出場したお父さんが転んでしまうというシーンについて、陸上のトップ選手がその原因は「仕事中の姿勢」にあると分析してるといった内容です。

さすがトップ選手だけあって、非常に理にかなった分析だと思います。

 

しかし、この問題は何もお父さんもしくは大人だけの問題ではなく、

子供たちにも共通してる問題です。

当院には学校の先生をされている方が数名通院されてましてよく話しを聞くのですが、最近の子供たちは、

よく転ぶ、すぐ転ぶ

そして

よくケガをする、すぐケガをする

と、みなさん口を揃えて言われます。

 

この原因がまさに「姿勢」にあり、そこからくる「筋力低下」が大きく関与しています。

たびたび「姿勢」についてはお話ししてあるとおり、近年はゲーム・パソコン・スマホの普及などにより、「猫背」の方が急増しております。(大人・子供問わず)

本来、人間は立位の状態では踵の方に重心が掛かるのが正常なのですが、猫背の状態では前のめりのバランスになるので、重心はつま先側の方に掛かりやすくなります。

 

そうなると歩く時・走る時の基本となる足の運び、

・踵から地面に着地(ヒールストライク)

  ⇓

・足裏全体が地面に接地(フラットフット)

  ⇓

・親指で蹴る(プッシュオフ)

これが出来ず、つま先をズルズル滑らすような感じで足を前へ運ぶことになり、特に走る時は気持ちが「前へ、前へ」といってしまうため、つまづきやすくなるのです。

 

また、普段から猫背でいると上体をしっかり起こすのに重要な筋肉

背筋(脊柱起立筋・せきちゅうきりつきん)が弱っているため、走る時に前傾姿勢になった際に自分の頭の重さを支えきれなくなりドンドン前かがみの姿勢になって、最終的に前のめりに転んでしまう・・・というケースも多いです。

 

 

速く走れるようになるためにも、普段の姿勢は重要

 

走る時にとっても重要なポイントは、股関節肩甲骨の動きにあります。

当然のことですが、股関節がスムーズに大きく動けば足の回転はよくなります。

肩甲骨がスムーズに大きく動けば腕がよく振れます。

 

しかし、普段の姿勢が悪い人は、股関節を前へ動かす役目である大腿直筋(だいたいちょっきん)や腸腰筋(ちょうようきん)が拘縮して動きを制限してしまい、また後ろへ動かす役目である大殿筋(だいでんきん)やハムストリングは低下してしまいます。

 

そして、猫背になると肩甲骨の位置は正常の位置よりも外方向にズレ、背筋群の緊張により動きを制限されてしまうので腕の振りが小さくなってしまいます。

 

このように、きれいなフォームで気持ちよく、そして速く走るためには、走る時だけ姿勢を気をつけるのではなく、

普段から姿勢を気をつけ、正しい身体のバランスを作っておくことが重要なのです。

ちょうど今は町内運動会や小中学校の運動会など、運動会シーズンであるご家庭も多いと思いますので、ご家族で今一度「姿勢」を意識し合ってみてください。

 

 

 

 

 

 

第23回「肩こり、首こり、そして頭痛」

2017-05-18

近年のパソコン社会、車社会そしてスマートフォンの普及などが原因で、軽い重いは別として、10人いれば8~9人は肩こり及び首こりを抱えてるというのが現状でしょう。

当院におきましても、年々「肩こり」「首こり」を訴えて来院される患者様は増えております。

格安のマッサージ店があちらこちらにどんどん出来てるのもそのせいではないでしょうか。

肩こり・首こり=マッサージ・揉んでもらう

と、お考えの方が多いように思いますが、その考えは実は正しくはありません。

確かに一時的に気持ちよくなったり、楽になったりするにはいいと思いますが(*間違ったマッサージで悪化することもあるので要注意)、根本改善には繋がらず、しばらくするとまた元に戻るというのが現実です。

実は、肩こり・首こりというのは、非常に根本改善が難しく、時間のかかる症状なのです。

 

それはなぜか?と言いますと、

 

肩がこる首がこる原因は、姿勢が大きく関与している

からです。

姿勢について←お読みください)

姿勢が崩れることにより頭の位置が体幹上からズレ、そして頭の重みが首~肩にかけてズシーンとのしかかることによって筋肉に過度な負担がかかって硬直してしまってるのです。

この頭の位置を正しい位置に戻すことをしないと、いくら一時的に筋肉を緩めても、またすぐ負担がかかって硬直するという繰り返しになります。

 

そして、その硬直がひどくなると「頭痛」が起こる方も多くおられます。

なぜ、肩こり・首こりがひどくなると頭が痛くなるかと言いますと、

写真は後頭骨から首(頚椎)にかけての模型です。

印をつけてある赤い部分は椎骨動脈という血管なのですが、見ておわかりのとおり、首から後頭骨の間をすり抜けるように血管が通っています。

この血管が首の骨がズレたり、または後頭下筋群といった後頭部と首をまたいで付いてる筋肉群の拘縮によって圧迫され脳に行く血液の量が減少し、その結果脳の中が酸素不足となり頭痛が引き起こされるのです。

 

これらのことから、肩こり・首こり、または頭痛を根本から改善するには、

頭を正しい位置で支える身体のバランス作りが不可欠

なのです。

 

当院では、肩や首の症状であっても、

・足底のアーチの状態←重心を正しく保つために必要

・股関節の可動域←体幹をしっかり起こすために必要

・骨盤の状態←左右のバランスを保つために必要

・背骨(椎間関節)、肩甲骨の可動域←猫背解消のために必要

などはしっかり診て調整していきます。

 

そのうえで、患者様自身にも正しい姿勢を意識して頂くための指導、また正しい姿勢をとりやすくするためのエクササイズの指導を行います。

 

このようにして正しいバランスを身につけることによって、一時的に「気持ちいい」「スッキリした」というだけでなく、「肩、首がこらない」「頭痛がこない」身体になるのです。

 

 

 

 

第22回「産後の骨盤」@こずえ

2014-10-28

10月もあとわすがになりました。
今月、妊娠中の方と産後間もない方が来院され色々なお話しをさせていただきましたので、今回「産後の骨盤」についてお話しをさせていただきます。

以前「女性の骨盤」についてお話し致しましたが、生理中の骨盤よりも気を付けてもらいたいのが産後の骨盤です!

妊娠中、どんどん大きくなる胎児を骨盤で支えています。
そして骨盤の出口を通り産まれてくるのですが、その時に骨盤後方にある仙腸関節や、恥骨結合部分に負担を負います(母体の骨盤の形、お産の進行状況や、胎児の大きさなどで負担の負い方は人それぞれ異なります)

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何ヵ月もの間の重み、出産時の負担により、産後の骨盤はグラグラと不安定な状態になっています。
そのうえ育児による寝不足で、なかなか身体の疲れがとれにくくなってきます。

そうすると骨盤を支えている筋肉にも疲れが溜まってしまい、不安定な骨盤に歪みが出てきてしまいます。

不安定だった骨盤は、産後少しづつ安定してきますが、もしも歪みが出たままだと「ズレ」たまま固定されてしまいます。

骨盤のズレは、様々な身体の不調をまねきます。
そうならないためにも、産後の骨盤のケアは絶対に必要なのです。
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生後まもないお子様を連れての外出が気になる方も、ご自身の身体に不安があればお気軽にお電話でご相談下さい。
妊娠中の方のご相談ももちろん受け付けております。

第21回「ストレッチの注意点」

2014-09-30

「ストレッチ」というのは簡単に言えば筋肉を伸ばす行為です。

疲労が溜まって拘縮してしまった筋肉を繰り返し伸ばすことにより筋肉に柔軟性が戻り関節の可動域があがったり、また体内の血液やリンパの流れがよくなり疲労性物質が洗い流され疲労回復や痛みの軽減に繋がったり、新陳代謝が高まりダイエット効果もある、といったようにたくさんの利点があります。

しかし、ストレッチは正しく正確にやらないと逆効果になってしまうことを皆様はご存知ですか?一見ただ単に筋肉を伸ばすだけなので簡単そうに見えるのですが、実は効果的にするためにはとっても大切なポイントがいくつかあるのです。今回はその「ストレッチ」を行う際の注意点をいくつかお話ししたいと思います。

 

一、「正しい方向に伸ばす」・・・・・筋肉はそれぞれ伸び縮みする方向が決まっています。自分のストレッチしたい筋肉はどの方向に伸び縮みするのかを知ってするのとしないのとでは効果は全く違ってきます。ほんの少し角度が変わるだけで違う筋肉がはたらいてしまったりするので、専門家にしっかり聞いてからやることをお薦めします。images

一、「伸ばし過ぎない」・・・・・これはとっても大事なことです!伸ばせば伸ばすほど効果があると思ってる方が多いのですが、これが逆効果になる大きな原因です。「過剰ストレッチ」という言葉があるくらい、強く伸ばし過ぎたり、回数を多くし過ぎたりは絶対しないでください。「きく〜」「痛〜」と思うとこまで伸ばすと、もう伸ばし過ぎです。筋肉を伸ばそうとする指令を出すだけで効果はありますので、ご自分でやるストレッチは物足りないくらいで十分なのです。imagesCAYQY09V

一、「ポンピングはNG」・・・・・クックックッと反動をつけるようにするストレッチを「ポンピング」といいます。これもよくやってる人がいるのですが、筋肉を柔軟にするためのストレッチにはこれは逆効果です。伸ばした筋肉を急激に戻すことにより「縮もう」とする力が強くはたらき、逆に筋肉は固くなってしまいます。それどころか、筋肉が硬い人がこのポンピングをすると、プチッとなってしまう危険性もあります。

ストレッチは、ゆっくり伸ばしていき、ある程度伸びたところで止める。そして7〜8秒ほど止めてから、またゆっくり戻す。といったのを5回、多くても10回まで繰り返すのが効果的です。imagesCAST0LOJ

 

今回のお話しは、あくまでも一般的に健康目的で行うためのストレッチのケースです。ですから、一番大切なことは「無理をしない」こと。すぐに効果を求めて「過剰ストレッチ」を行わないように気をつけてください。継続することにより必ず効果は表れます。

正しいストレッチで健康な体になりましょう!!

 

 

 

 

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